雨降る日のキセキ
そうからかってみると、千隼くんは恥ずかしそうにそっぽを向いてしまった。


「ごめんごめん、冗談だよ。ありがとう、千隼くん」


千隼くんはいつもいつも、返しきれないほどの優しさを私に注いでくれる。


そんな千隼くんがこんなに近くにいるのに、私は遠い遠い朝陽くんを想ってしまう。


…だめだなぁ…ほんとに…。


「…この空を見せたかっただけなんだ。そろそろ戻るか。肌寒いしな」


「……私はもう少しここにいるね」


もう少し…あと少しだけ、この星に照らされていたい。


千隼くんは、そんな私の心情を察してか、少し寂しそうな顔をした。


「…そっか。じゃあ…また明日。おやすみ」


「うん…。おやすみ」


< 160 / 336 >

この作品をシェア

pagetop