雨降る日のキセキ
「ありがとな、千紘。もう大丈夫だから」


穏やかにそう言ってから、キッと華を睨みつける千隼くん。


何かを言おうと口を開いた瞬間。


―ガタッ


廊下から物音が聞こえた。


翔吾がドアを開けて確認すると、千隼くんをよく取り囲んている女の子たちが3人いた。


「今の話、ホントなの?」

「安藤さんが千隼くんたちに嫌がらせしてたんだ」

「野球部が秋の大会で負けたのも安藤さんのせいってことだよね」

「なにそれ最低じゃん」


ヒソヒソ話ながら華を見る目は、完全に敵意の籠もった目だ。


「今の話は聞かなかったことに―」


「皆に話しちゃおーっ」


翔吾が頼み込む前に女の子たちはパタパタと走り去ってしまった。


「どうしよう…」


部内トラブルのことが噂になったら監督の耳にも入っちゃう…。

 
そうなったら全部水の泡だ…。


「赤坂がしたことは話してないから大丈夫だ。ヤバイのはお前じゃねぇのか?安藤」


千隼くんが華に向き直る。


華は顔を真っ赤にして唇を噛んでいる。
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