雨降る日のキセキ

✡✡

「違いますよ千紘さん。そこを縫ったら次はこっちです」


「えっ?こ、こう?」


「違いますって。ほんと不器用ですよね〜」


新しく入ってきてくれたマネージャーの木下琴音(きのしたことね)ちゃんにからかわれる。


琴音ちゃんはボーイッシュな子だけど、お裁縫がとても上手い。


予選前に渡すためのお守りを手作りしてるんだけど、どうしても上手くできなくて琴音ちゃんに教えてもらっている。


「それに、それ千隼さんにあげるんですよね?もっと縫い目の間隔均等にしたほうがいいです」


「な、なんで分かったの?」


「見てたら分かりますよ〜。千紘さん、めちゃくちゃ顔に出てますよ」


私どんな顔して縫ってたんだろう…。


「どっちが後輩なんだか分かんねーな」


入り口から声がして振り返ると、千隼くんがニヤニヤしながら部室に入ってくるところだった。


「もうっ。一応サプライズのつもりなんだから入ってこないでよ」


「入ってこないでよもなにも、部室だからしょうがないじゃん」


そう言って私が縫いかけているユニホーム型のお守りをつまみ上げる千隼くん。
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