あの日の返事をもう一度。
 もしかして、麻央に何かあったのか?

 麻央の声が聞こえた教室の扉を勢いよく開ける。

 「…」

 「はーちゃん…?」

 懐かしい呼び方に浸る時間もなく、俺は扉を閉めて足速に歩き出す。

 さっきの光景が鮮明に思い出される。

 なんで…麻央は…斗真に抱きしめられていたんだ…?

 斗真は強く、優しく麻央を抱きしめていた。

 『麻央ちゃんに告ったことあるんだよね』

 『脈ありってことでいいんかな』

 「っ…」

 苦しい。

 いつかは見ることになる光景でも、今はすごく、つらい…

 自業自得でも、つらくて、苦しい…
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