俺の子でいいよ。～不倫関係にある勤務先の医者との子か、一夜だけ関係を持った彼との子か分からない～

"春くんは家族なんて興味無いと思ってたわ"という愛奈さんのさっきの言葉を思い出す。

前に和泉くんも"母親を人質に取られてるようなもの"って、話してたから聞きにくいな。



「ね、ねぇ。春多くんの理想の家族ってどんなの？」

「んー、普通でいいよ。母親と父親と子供が仲良く暮らしてるごく一般的な普通の家庭」


すぐ隣を歩く春多くんが、ケロッとそう口にするけど。
そうだった、春多くんのお家(うち)、普通に父親はいないんだった！



「あの、実家から"元気にしてるの？"って時々連絡来ててさ。最後に帰ったの春でさ。安定期入ったら、うちの親に挨拶に行ってくれるかな？」

「……………」

「だ、駄目かな？でも産まれてからじゃ遅いし……」

「うん、いーよ」


あ、外面の笑顔が張り付いた。
ていうか、さっきの間は何だろう。



「卒業試験終わったら夏休みに入るんだけど。珠里さんの実家って何処？」

「うん、隣の市だから近いんだけど。まだ妊娠した事も言ってなくて……流石にまずいかなーって」

「そうだよなー。もう4ヶ月になるし。さ来週あたり行こっか？」

「えっと、それと。春多くんのお母さんにも挨拶したいなーなんて……」








「ごめん。あんたとだけは会わせられない」