俺の子でいいよ。~不倫関係にある勤務先の医者との子か、一夜だけ関係を持った彼との子か分からない~
「妊娠するとプロゲステロンが急に増加するから、情緒不安定になりやすいんだよ」
「プ、プロ…テ……??」
「ホルモンバランスが崩れて、涙脆くなったりするってこと。マタニティーブルーとかいうだろ?」
「あ、 あぁ。あれね!」
レディースクリニックを出て、春多くんと2人並んで歩く。
なぜか自然と手を繋いでて、きっと私の歩幅も合わせてくれてて、なんだかまるで本当に恋人同士みたい。
「前はこんなに泣き虫じゃなかったのに、そっか情緒が不安定になってるのかー。突然、泣いてびっくりしたでしょ?」
「仕方ねーよ。あんたの場合は色々あったから尚更だろ」
「……んっ、ふが」
この子がフッと笑ったと思ったら、それと同時に手を繋いでる反対の手で鼻を摘ままれた。
「ほ、ほふへんっはひふる(突然なにする)」
「仕返し。病院で俺が泣かしたみたいになってたじゃん」
「は、離して……」
「ふはっ、目ぇ真っ赤にして変な顔」
なんて、目を細める春多くんが腰を屈めるから、一気に距離が縮まって──
「あれ、春多じゃん。こんなとこで何やってんだ?」