つけない嘘
充は私のカップラーメンを一瞥すると言った。

「珍しいね。今日は飲まないの?」

「うん。ちょっとね、飲む前に充と話したいことがあって」

「俺も」

俺も?

なんだなんだ?

思いもよならない彼の返答に胸がざわついた。

「充から先に言って」

「俺は後でいいよ。瑞希からどうぞ」

彼から話があるだなんて結婚して以来初めてだ。

充の言いたいことが何なのか気になるけれど、思い切って自分から話を切り出す。

「あのさ、ずっと考えてたんだ。充とこれからのこと」

「うん」

彼の視線はテレビに向けられたまま。いつもより目が虚ろなような気がした。

「私も仕事が忙しくて残業も多いし、このままずっと働き続けるのにも疲れちゃった。もっと家事もきちんとしたいし、子どものこともそろそろ考えたいなぁと思って」

ドキドキしていた。

彼の反応と、私の覚悟に。

充は食べ終えた弁当をテーブルの上に置き、私の方に顔を向けた。

怖いくらいに無表情な彼の顔が近づいてくる。

テレビの音がやけに大きいと感じながら久しぶりに彼と唇を重ねる。

そのまま、床に押し倒され、胸元のボタンをやや乱暴に外されていく。

無表情な彼がこんなに激しく求めてくるのは、今まで経験したようなことがなかった。

彼の執拗なキスが首元から胸に下りていく。

受け入れたくない気持ちが勝りそうで、必死に自分の意識を遠いどこかへ向けていた。

亮の笑顔が脳裏をかすめる。そして亮の優しい控えめなキス……。

無理やり私を押し広げた瞬間、思わず「いや!」と声を上げた。




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