白馬の王子と風の歌 〜幼馴染は天才騎手〜
   * * *


 ファンファーレが鳴り響く馬場に、ゲートに入った出走馬たち。
 合図とともに勢いよく飛び出していく黒や茶色の毛色の馬たち。
 二十歳の冬に、俺は新人賞を取った。
 大怪我からの復帰を経て、いくつものレースで勝利を獲得していく俺の姿にフーカも驚いているようだった。
 テレビでも取り上げられるようになり、若い女性にも声をかけられるようになったが、俺は終始ファンサービスの範囲内で対応した。
 塩対応な若手天才騎手、なんてインタビューで揶揄されたこともある。そんなときには「俺の恋人は馬に乗っているときに吹く風なんです」と意味深なことを言うようにしている。


 それは――フーカだけが知っている。俺の大切な風の歌。


「新人賞のご褒美に処女ちょうだい、ってバカでしょ」
「バカなもんか。結婚は卒業するまで待つからヤらせろ」
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