弁護士は逃げる婚約者を離したくない
 * * *

私が茶色のスーツの男こと南川宇大(ミナミカワウダイ)と顔をあわせたのは、セレブ御用達で有名な高級ホテル『エンペラーホテル』の鶴の間でだった。

成人式以来の振り袖に身を包んだ私は、そこで南川宇大と彼の両親と顔をあわせた。

「こんなにも美人さんになっちゃって」

「宇大くんも男前に育っちゃって」

南川の母親と私の母親が談笑をしているその横で、私は何とも複雑な気持ちに包まれていた。

私の祖母と南川の祖母が学生時代から仲がよかったからお互いの孫を結婚させようだなんて…それって、許嫁とか婚約者的な感じですよね?

祖母は私が中学2年生の時に、南川の祖母も5年前に亡くなっている。

結婚を決めたであろうお互いの祖母はもう亡くなっているんだから、許嫁とか婚約者の話は無効になるんじゃない?

それが今でも続いていたうえに今日を迎えたと言うその展開に、私は何も言えなかった。
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