紳士な副社長からの求愛〜初心な彼女が花開く時〜【6/13番外編追加】

ひとり焦る私を見てピクリとも表情を変えない佐原くんは、本当に気分を害していないのかどうか量りかねる。


同期が40人くらいいて、仲良くなった子たち以外はまだ正直把握しきれていない。

180センチあるかないかのスラっとした長身に、焦茶の髪は襟足短めのツーブロックヘア。

形の良い眉に奥二重の切長な瞳。無駄な贅肉のないキレイな顎のライン。

そんな整った容姿の持ち主の彼はすごいイケメンだと主に女子たちから騒がれていたけれど、この研修中、私自身佐原くんとは今まで特に会話という会話をした記憶もない。

だけどこの人はすでにそんな私の名前ですら覚えてくれていて。

なのに私ったらとんだご無礼を……!


「お詫びにこのブラックコーヒーを差し上げます……!!」


隣に鎮座しているブラックコーヒー缶を(うやうや)しく彼に差し出した。


「え、別にいい、気にしてないし」

「むしろ貰ってくれると助かります……。間違えて買っちゃった行き場のないコーヒーだから……!!」

「……行き場のないコーヒーをお詫びの品にしないでくれる?」


緩ーく眉間に皺を寄せて言う佐原くんに、へら、と笑って誤魔化してみる。

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