先生と生徒の関係は卒業まで
■プロローグ タイムリミット
僕と真逆の君は、あと1ヶ月で僕の生徒ではなくなる。



彼女は高校3年のお嬢様、田中由美。

アイドル級の可愛さで男女問わず魅了している。
しかも勉強もできるから、有名私立大学への進学が決まっている。

彼女の魅力は他にもある。可愛くて勉強もできるのに、どこか抜けている天然な部分がある。だから近寄りがたい雰囲気にはっておらず、周りにはいつも人が集まっているのだろう。

そんな印象の生徒。ただそれだけだ。

そうなるのも仕方ない。
というか、僕のプロフィールを知れば、まぁそうだよねと思ってくれるはず。

僕はさえない国語教師の宇佐治彦。
まだ20代ではあるけどアラサーだ。高校生からすれば、十分におじさん。

本を読むのと編みぐるみが趣味で、人と関わるのはあんまり好きじゃない。
なのに教師になったのは、国語の成績が良くて本が好きだったからだ。
それに両親も教師だったから、何となくこの道に進んだ。

高い志とか、そういうのは一切ない。


こんな僕だから、あと1か月で卒業をする彼女と関りができるなんて思ってもみなかった。
だって、この3年間も特に何もなかったんだから……。
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