極秘懐妊だったのに、一途なドクターの純愛から逃げられません
「私、初恋の相手を妹に奪われたんです。彼氏って言うほどの付き合いではなかったかもしれないけれど、信じていた人を家族に奪われたって心の傷は今でも消えずに残っています」

「それがこの間の彼だね」

「ええ」

今になって駿が悪いとか、桃花が憎いとかいう気はない。
もちろん見たくも会いたくもないけれど、2人が不幸になるよりも幸せになってほしいと思うし、そもそも10年も経てば時効だと思っている。
ただし、裏切られたって思いだけは消えることがない。

「それに、父が7年前に失踪していて」
「失踪?」
「ええ、中学校で自分が教えていた生徒の母親と駆け落ちしたんです」
「それは・・・」
さすがに太郎さんも絶句している。

「だからってわけではありませんが、私は人を信じることができません」
「美貴さん」

「私は、一生誰とも結婚せずに一人で生きるって決めたんです」

そのために必死にお金を貯めて、店を開いた。
全ては一人で生きていくため。

「じゃあ、子供は?」

1人で生きていくって決めたのになぜ子供を望むのかって聞かれたんだろう。

「それでも、寂しくて。自分勝手なのはわかっていますが、子供が欲しかったんです」
「勝手な言い分だね」
「え?」

太郎さんの言葉とは思えない声が聞こえて、思わず顔を上げた。
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