極秘懐妊だったのに、一途なドクターの純愛から逃げられません
「一週間だけ、僕に付き合ってくれないかあ」
「え?」
私は口を開けたまま固まった。

きっとそれは、一週間仕事を休めって意味なんだろう。
でも、

「先生は無理しなければ仕事をしてもいいって」
・・・これは少しだけ嘘。

仕事をしてもいいとは言われていない。
出来れば休んだ方がいいけれど、無理強いはできないと言われただけ。

「違うんだ、美貴さんに僕の地元を見てほしくてね」
「太郎さんの地元?」

確か関東近隣の地方都市。
田舎だけれどいいところだよって、以前太郎さんが言っていた。

「ちょうど、週末から戻ろうと思っていたんだ。美貴さんさえよければ一緒に来ないかい?」

太朗さんの故郷かあ、もちろん私も見てみたい。
生まれてくる子にも話してあげたいし、いつか子供を連れて行きたいとも思う。

「明日と明後日は沙月さんが店に出てくれるし、泉美さんも3日間ぐらいなら来てくれるらしい。その後は数日お店を休むことになるけれど、定休日と合わせればそんなに長く休むことにはならないでしょ?」
「そうだけれど・・・」
泉美や沙月ちゃんに迷惑をかけて申し訳ない。

「僕のわがままだと思って聞いてくれないかな?」

きっとこれが最初で最後の太郎さんとのお出かけ。
私にも赤ちゃんにも、一度くらい太郎さんとの思い出があってもいいかな。
私はそんなつもりでうなづいた。
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