極秘懐妊だったのに、一途なドクターの純愛から逃げられません
久しぶりに落ち込んだ。
元々泉美のためを思って口を出た言葉が返って騒ぎを大きくしたし、何よりもその一部始終を太郎さんに知られてしまったことに心がなえた。

ダメだ、もう帰ろう。

沙月ちゃんからは「戸締りして帰りますね」ってメールが来ていたし、今日はこのまま帰って寝よう。もう店に戻る気力もない。

「ちょっと待って」
ぐったりとうつむきながら病院の出口に向かおうとした時、後ろから腕をとられた。

「どう、して?」
振り向いて、そこにいたのは太郎さん。

「僕ももうすぐ終わるんだ。送って行くから」
「いや、でも・・・」

困ったな、今日の私はかなり弱っているのに。
この状態で一緒にいれば何を口走るかわからない。

「いいから待っていて」

ダメだ、何とかして断らないと。

「あの・・・この後まだ仕事が」
「じゃあ店まで送るし、終わるまで待っている」

「今日は遅くなりそうで・・・」
「かまわないよ。待つから」

うーん、どうしよう。

「そういえば、友人と会う約束が・・・」
「嘘でしょ」
「・・・」
はい。


結局少し話をしましょうと言うことで落ち着き、近くのカフェに入ることになった。

本当なら太郎さんに会うのはつらいけれど、それでもどちらかの家に行くよりはいいかと納得するしかなかった。
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