迷信を守らず怪異に遭遇し、必死に抵抗していたら自称お狐様に助けてもらえました。しかし払う対価が、ややエロい件についてはどうすればいいのでしょう。

助けた対価の要求(三)


「見たくないと思っても、お前は別だ。名の縛りがあり」

「は? なんですかそれ」

「関家……。名の由来を知っているか?」

「由来って、どっかの藩主だったとか神官だったとか、大昔の話ですか」

「ああ、それもそうだ。しかしそれ以外に、関という由来には関所の関という意味と、川をせき止める(せき)とがある。この地に住まう関家は元来、妖の世界からあふれ出るものをせき止めるという意味から付けられた」


 せき止めるための堰。

 もし今の話が本当だとするならば、本家はその中心で分家がそれを支えてきたということになる。

 父の言っていた仕方ないという言葉が、ここに結び付くのだとしたら……。

 今本家には祖母の姉である大婆様以外、誰もいない。

 何年か前の事故で、本家の人間がみんな死んでしまったからだ。

 ここに帰って来た日に、祖母が分家の中から本家の跡取りを選ぶなんて言っていたっけ。


「そんなこと言われても、私は今まで妖怪とかお化けなんて見たことも聞いたこともなかったのよ。そんな小説の中のような話をされても……」

「だが、実際におまえは見ただろう」

「……」


 そうだ。

 神隠しに追いかけられる前だったら、きっと明日本家に行って同じ説明をされたとしても絶対に信じなかっただろう。

 今は小説の世界のことと言いつつも、なんとなくこの話が嘘ではないということが分かる。
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