迷信を守らず怪異に遭遇し、必死に抵抗していたら自称お狐様に助けてもらえました。しかし払う対価が、ややエロい件についてはどうすればいいのでしょう。
第六章

女子高生のお部屋(一)


 午前中まで吹いていた海風は、夕暮れ時から山風へと変わる。

 セミの声もやや少なくなり、窓の外を覗き込めばトンボが飛んでいた。

 茜色に染まった辺り一帯は、ほんの数十分もすればすぐに夜の帳が下りる。

 風の音だけが響く、静かな夜だった。

 私はただそわそわと窓の外を何度か覗いては、携帯に目を移す。

 コンビニから帰った後、やることのない私は携帯で怪異について調べていた。

 しかしいくら調べても、結局出て来るのはホラーという怪談話でしかなく、どこまでが本物でどこまでが作り物なのか全く分からなかった。


「まだかな……」


 時間はまだ八時を回ったばかりで、寝るには早いということは自分でも分かっている。

 しかし今日神隠しに捕まると思うと、居ても立っても居られないのだ。

 慣れてしまえば、もっと落ち着いていられるのだろうか。

 そう考えて自嘲(じちょう)する。


「こんなこと、慣れるまでそう何度も起きてもらっても困るし」


 今までこんなこととは、無縁(むえん)の生活をしていたのだ。

 今回たまたま神隠しに目を付けられてしまっただけで、別に霊感(れいかん)があるなどそんなことはもちろんない。

 まだかなと再び視線を窓へ向けると、窓枠に乗る形でシンが姿を現す。
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