迷信を守らず怪異に遭遇し、必死に抵抗していたら自称お狐様に助けてもらえました。しかし払う対価が、ややエロい件についてはどうすればいいのでしょう。
第二章

神隠しは怪異の始まり(一)


「あっつい……」


 その言葉以外はもう思いつかない。

 日陰を歩くなと言われても、日なたを歩いていたら熱中症になってしまう。

 私はなるべく日陰の裏道、裏道へと進む。

 高い家の塀と木々に囲まれた裏道は、先ほどより何度温度が下がったのだろうかと分かるくらいに涼しい。


「はぁ、もう無理」


 日なたへは戻らず、このまま日陰の道を行こう。

 いくら裏道とはいえ、表だって誰も歩いていないのだから同じだ。

 ジリジリジリという耳障りなノイズが走る。

 私は耳に付けたイヤホンを外し眺めた。

 特に電源が切れたわけでも、壊れたようにも見えない。


「まだ買ったばかりなのに、もう壊れたのかな」


 もう一度付けようとした時、今度はキーンという耳鳴りが聞こえてくる。

 暑い中歩き続けたせいだろうか。

 耳を抑えても、耳鳴りは消えない。


「なにもぅ……、あっ」


 耳を抑えた手から、イヤホンが転げ落ちる。

 コロコロと線のないイヤホンは転がっていく。

 私はやや前かがみになり、下を向きながらイヤホンを追いかけた。

 そして二つとも拾い上げた時、ふとおかしなことに気付く。


「あれ?」


 音がない。

 まるで夜中のように辺りはシーンと静まり返り、あれほどせわしなく鳴いていたセミの声も聞こえない。
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