迷信を守らず怪異に遭遇し、必死に抵抗していたら自称お狐様に助けてもらえました。しかし払う対価が、ややエロい件についてはどうすればいいのでしょう。

本当の願い(二)


 拒絶するような風は、取り巻くモノから形を変えて私めがけて飛んでくる。

 今までと全く違う風の動きに手が自転車から離れ吹き飛ばされそうになる。


「おい、いい加減祓うぞ。危険すぎる」


 後ろから戒が私の体を支えた。

 そのおかげて離れそうになった手はまだ自転車のハンドルを握っている。


「祓うなら俺が祓う。千夏、対価わかってんだろーな」

「ああ? 対価などなくともおれがやるからいい」


 いつの間にかシンは戒の隣に立ち、私を支える戒の手を払いのけた。

 なんの対抗意識なのか知らないが、私の後ろで二人はいがみ合っている。


「ちょっとぉ、だから祓わないってば」


 二人の手を避け、私はそのまま自転車に乗った。


「お、おい。何してんだよ、千夏」

「祓わないって」


 私の行動が分からない二人がほぼ同時に声を上げる。

 しかし私はそんな二人を無視し、後ろから風を受けながらフラフラと自転車をこぎ始めた。
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