迷信を守らず怪異に遭遇し、必死に抵抗していたら自称お狐様に助けてもらえました。しかし払う対価が、ややエロい件についてはどうすればいいのでしょう。

得体の知れない恐怖(三)


 私の言葉に戒の眉間のシワがますます深くなる。

 せっかく断ってるのに、なにも怒ることもないのになぁ。

 自分が長になれるんだから、もっと嬉しい顔すればいいのに。


「おまえは本質を分かってなさすぎだ千夏」

「本質? 長になるってことが?」


 この町の一番の大地主であり、堰の役目を果たす一族。

 確かに私は、自分のことなのにあまりにも何も知らなさすぎる。

 今まで興味を持ったことも、疑問を持ったこともなかった。

 そう考えると、少しおかしくは思う。なぜ父にも祖母にも私は聞こうとしなかったのか。

 自分が長という立場を押し付けられるかもしれないのに……。

 急に怪異が見えてどうしたらいいか分からないというのに。


「なんで私はこの状況を無意識に受け入れようとしてたんだろう。怪異が見えることだって、本来は普通ではないことのはずなのに……」

「千夏、それを考えるのか?」
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