淋しがりやの足跡

(……まさかこんなことになるなんて)



検査して。

入院して。

投薬治療して。



(きっと良くなるって、ずっとそう思っていたのに)



重ねた手。

史郎さんの手。

こんなに細かったかしら。






史郎さんの病室に戻った私達は、お互いに無言だった。

こういう時、個室を選んで正解だったのか、よくわからなくなる。

沈黙が、今の私には重すぎる。



史郎さんは白いベッドに腰かけた。

ぼんやり窓の外を見ている。

私は備えつけられている冷蔵庫からペットボトルを取り出し、入院する際に購入した史郎さん用の、プラスティックのコップにお茶を注ぐ。

片手をあげて、コップを受け取る史郎さん。



ありがとう、なんて言わないのよね。

いつだって片手を少しあげる仕草をするのよ。



心の中でこっそり毒づく。

だけどそのすぐあとに反省もする。



そんなことの繰り返しだったのかも。

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