淋しがりやの足跡

「でもオレも、親父やお袋の時には慌てたからなぁ」

「それは、そうだったけれど……」

「ふたりとも今日、ここへ来るって言ってたぞ。病院の売店で何か、飲みものとか甘いものでも買っておくか?」



史郎さんは嬉しそうだ。

53歳と49歳の娘に、いつまで経っても子ども扱いするんだから。

……まぁ、それは私も一緒だけど。






数時間後。

ふたりの娘が揃って病室に顔を出した。



「父さん、思ったより元気そうね。少し痩せたみたいだけど」



行恵がじっと観察するように史郎さんを見つめる。

史郎さんは、
「お前は少しふっくらしたんじゃないか?」
なんて言って、いたずらっ子の瞳で笑った。



もう!とふくれっ面になりながらも、行恵は安心したように、すぐに笑顔になる。

< 6 / 43 >

この作品をシェア

pagetop