4番目の彼女
 そうして私の残業の日々は続いた。

 たまにステンレスボトルで筆耕室のドアの外にそっと差し入れられるコーヒーがありがたい。
 筆耕中はこぼしてしまうと大変なので部屋に飲み物を入れないことにしているし、気を使ってか声もかけずに置いてくれるから、差し入れ主であろう林さんにお礼も言えていない。

 今は、やり切るだけだ。

 そして12月24日、恋人たちがイルミネーションとチキンを楽しみ、とっくにベッドに入っているであろう25時にようやく私は作業を終えた。

「……やった」

 出来上がった年賀状を納品用の箱に仕舞って、あとは林さんが明朝お客様に納品してくれればOKだ。

 私は、寝不足と無事終えられた安堵の謎のコラボレーションで若干ハイだったんだろう、従業員用の出口をでると徹志くんの幻が見えた。
 彼の腕の中の温かさを思い描いて、マッチ売りの少女はこんな感じだったのかなと薄れゆく意識の中でぼんやり思った。

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