王室御用達の靴屋は彼女の足元にひざまづく

 フリッツへの思いを断ち切ることには成功したが、上書きした恋は前の恋よりも強烈で鮮やかな思いだった。

 翌日から晴恵は檜山の工房通いを自分に禁じた。
 ……歯止めが利かなくなり、檜山の背中にしがみつきそうな自分が怖かったからだ。

『今日は失礼しました。妹にもきつく言ってきかせました。何よりも、私こそが邪魔してしまって申し訳ありませんでした。妹の結婚式の一週間前に伺います』

 檜山に震える指で送信した。
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