今夜、私は惑わされる。

綺麗……。


近くで見た男の子の顔は思った以上に整っていて、綺麗だ。


それに鼻がシュッとして、髪の毛もサラサラ。


なんか“闇の王子”さんみたいにかっこいい。



「……いたっ」


「あっ、ごめんなさい……」



ある程度、綺麗になった。


手に貼る用の絆創膏をカバンの中からさがす。



「……どうして、僕なんかにこんなことしてくれるんですか?」


「え?」



私は絆創膏を探す手を止め、男の子を見る。


急だな……。



「いつもみんなは、あの不良達に絡まれるのが怖くて僕のこと、見て見ぬふりしてる。君が初めて」


「……だって、あんなの見てそのままなんて、無理です。まぁ、殴られる前に止めに入るのは出来なかったんですけど……」



私は再び、カバンの中を探す。



「……面白い。何年生ですか?なんとなくだけど僕と同い年な気がする」


「二年です」


「じゃあ、同い年だ」



カバンから絆創膏を見つけ、男の子の手に貼り付ける。



「ありがとう」


「私、広末七葉って言います」


「僕は三橋はじめ。ねぇ、また話さない?」



はじめくんが立ち上がるのに合わせて私も立ち上がる。



「いいですよ!」


「今日はありがとう!またね」



はじめくんが手を振ってくれる。


それに、手を振り返す。


初めは感じが悪い人って思ってたけど、本当はそうではないのかも……?


ていうか、明後日のやつ大丈夫かな?



「ねぇ……え?」



少し、視線をはじめくんから外しただけなのにもう、彼の姿はなかった。







< 9 / 44 >

この作品をシェア

pagetop