ライム〜あの日の先へ
零次の現在の住まいはわからない。
確実に居るのは、五嶋商事の本社だ。
都心のビル街。てっぺんが見えないほど、空に向かってそびえ立つビル。
心臓が痛いほどに高鳴るなか、鈴子はビルのエントランスへと向かった。
空調が効いていて、涼しいビルの中。
入った正面に、受付と書かれたブース。ブース内には、まるで女優のような美しい女性がいた。
「あの、すみません。望田、と申します。五嶋零次さんにお会いしたいのですがいらっしゃいますか?」
「五嶋と申しますと、当社の社長の五嶋、でございますか?」
受付嬢は口元に華やかな笑みを貼り付けたまま、鈴子の全身を一瞥してから尋ねる。
「はい」
「失礼ですが望田様、アポイントは」
「ありません」
「どういったご要件ですか?」
ここに来た理由。それは、零次にしか言えない。
「私、ロサンゼルスで五嶋さんにお世話になって…久しぶりにお会いしたくて。五嶋さん、お忙しいですか?」
「本日はスケジュールが一杯です。望田様がいらっしゃったとお伝えしておきますので、ご連絡先を伺ってもよろしいですか?」
受付嬢の対応がひどく冷たい。
滞在しているホテルの名前を言うか。スマホの電話番号を伝えるか。
悩んでいると、コホンと小さなセキ払いが聞こえた。
ハッとなって振り返ると、背後にスーツ姿の会社員がいる。受付待ちのようだ。
「あ、もういいです。失礼しました」
苛立ちを隠さない後ろの会社員にペコリと頭を下げて鈴子はあわててビルの外へと出た。
確実に居るのは、五嶋商事の本社だ。
都心のビル街。てっぺんが見えないほど、空に向かってそびえ立つビル。
心臓が痛いほどに高鳴るなか、鈴子はビルのエントランスへと向かった。
空調が効いていて、涼しいビルの中。
入った正面に、受付と書かれたブース。ブース内には、まるで女優のような美しい女性がいた。
「あの、すみません。望田、と申します。五嶋零次さんにお会いしたいのですがいらっしゃいますか?」
「五嶋と申しますと、当社の社長の五嶋、でございますか?」
受付嬢は口元に華やかな笑みを貼り付けたまま、鈴子の全身を一瞥してから尋ねる。
「はい」
「失礼ですが望田様、アポイントは」
「ありません」
「どういったご要件ですか?」
ここに来た理由。それは、零次にしか言えない。
「私、ロサンゼルスで五嶋さんにお世話になって…久しぶりにお会いしたくて。五嶋さん、お忙しいですか?」
「本日はスケジュールが一杯です。望田様がいらっしゃったとお伝えしておきますので、ご連絡先を伺ってもよろしいですか?」
受付嬢の対応がひどく冷たい。
滞在しているホテルの名前を言うか。スマホの電話番号を伝えるか。
悩んでいると、コホンと小さなセキ払いが聞こえた。
ハッとなって振り返ると、背後にスーツ姿の会社員がいる。受付待ちのようだ。
「あ、もういいです。失礼しました」
苛立ちを隠さない後ろの会社員にペコリと頭を下げて鈴子はあわててビルの外へと出た。