ライム〜あの日の先へ

私を思い出して


翌朝。
検査に向かう凛を見送って、鈴子はやっと病室を出た。

ほっとしたら、無性に空腹感に襲われる。寝不足の体はだるく、頭はひどくぼうっとしていた。
そんな無防備な時に声をかけられた。


「鈴子先生」


まだ外来患者の受付も始まっておらず、人の気配が少ない静かな早朝の病院の廊下。
声をかけてきたのは大きな紙袋を持ったハルトの母、琴羽だった。すでに完璧な化粧をしてビシッとスーツを着ている。
スキの無さがデキる女という感じで、よれよれの自分がなんだかみじめに思えてしまった。

「リンちゃん、入院になったんですってね。大丈夫ですか?」

プリスクールにはまだ連絡を入れていないが、琴羽はすでに凜の入院を知っていた。
琴羽は心配そうにこちらを見つめ、鈴子の言葉を待っている。
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