ライム〜あの日の先へ
車、と聞いて、即座に零次の姿が思い浮かぶ。
零次には会いたくなかった。

「お気遣いありがとうございます。でも、大丈夫です」

昨夜はほとんど眠れず、髪はくしゃくしゃ、化粧も剥がれ、服もよれていた。
早朝からバッチリきめている琴羽を見ているだけで、なんだか落ち込む。


ーー昨夜は、零次くんに愛されたのだろうか。零次くんとハルトくんと一緒に、幸せな朝を迎えるなんて、羨ましい。

仕事も家庭も順調なのだろう。琴羽からみなぎるイキイキとした気迫は今の鈴子にはまぶしすぎる。

「私はこれで」

鈴子は琴羽に頭を下げて小走りに駆け出した。もうこれ以上一緒に話をするだけでも、いたたまれない。


「あ、待って鈴子先生!お話が…」


鈴子は琴羽の制止をきかずに病院を出てバス停に向かった。
残念ながら、バスが来るのはあと30分後だった。


その時スマホがバックの中で震えた。
それは兄からのメッセージだった。






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