ライム〜あの日の先へ
「おにい、ごめんね。迷惑ばかりかけて」

「迷惑なんてかかってないぞ。
問題解決はコンサルの得意分野だ。凛にとって一番いい解決策を考えるから。
何しろ、凛と一緒にいられることは最高の報酬だからなぁ」

零次に知らせず出産を決めた時から、一成は一番の理解者だった。
五嶋商事に在籍していれば凛の存在が零次に知られるかもしれない。そう考えた一成は、人生をかけるとまで言っていた仕事を辞めた。そして商社マン時代に築いた人脈を最大限に利用して経営コンサルタントに転職し、鈴子と凛を連れて日本に帰国した。

一成のおかげで安定した生活が送れている。
一成がいなかったら、一人で凛をちゃんと育てられなかったかもしれない。

「今日は午後からオンラインミーティングがあるから、それまで俺が凛に付きそう。
鈴子はご飯食べたりシャワーあびたり少し休むといい」

「おにいだって疲れてるでしょ」

「夜行バスでしっかり寝てきたから大丈夫。
久しぶりに乗ったけど、最近の夜行バスはすごいんだぞ、一席ずつカーテンがついてプライベートは確保できるし、リクライニングなんてフラットに近い状態になるから動くホテルみたいだった」

凛の入院を知った時にはすでに飛行機も新幹線も最終便が出た後だった。唯一の手段が夜行バスで、運良く席が取れたから飛び乗って帰ってきてくれたのだ。


本当に兄には感謝しかない。





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