ライム〜あの日の先へ

交錯する関係 鈴子

※※※

鈴子が手早く食事を済ませて急いで病室に戻ると兄はおらず、琴羽と零次が並んで凛のベッドの傍らに立っていた。
お見舞いに来てくれたのだろう。
主治医の二葉医師ではなく水上医師が診察に訪れているようだが、緊急性はなさそうだ。

母子家庭で育つ凛が知っている大人の男性といえば一成とプリスクールのマイケルくらいだ。大人の男性にあまり免疫のない凛は水上医師にかなり緊張している。

中に入って挨拶をしなくては。
そう思ったが、零次がいることで躊躇していた。あの夫婦のそばにいると動揺してしまいそうで会いたくなかった。


その時。


『ハルトくんのパパ!』

凛が零次に向かってハルトのパパと言った。

零次をハルトのパパだと認識してしまった。
そのことが自分で思っていたよりも衝撃だった。

ーー凛のパパだよ。
その人が凛がずっと会いたがっていた、凛のパパだよ。

凛の一番欲しがっている真実が、鈴子の胸をぎゅっと締め付ける。


体がこわばって病室に入れないでいると、水上医師が出てきた。

鈴子はとっさに挨拶もせず走って逃げてしまった。
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