ライム〜あの日の先へ
「すみません!!遅くなりました」

息を切らしながら、やっとやってきたのはハルトの祖母でもなく、母の琴羽でもなかった。

「ハルト、ごめんな!
母が急にぎっくり腰になってしまいまして。琴羽も会議中だし、妹は夜勤だし、父は手術中だし、と誰も迎えに来れず。
本当にすみませんでした」

「……そう、ですか」

鈴子はそんな返事しかできない。なぜ彼がハルトを迎えに来たのかがわからない。
初めて迎えに来た彼にハルトを引き渡していいものか、悩んでしまう。

「みずかみせんせいだ!」

凛が彼をみて叫んだ。
そう、やってきたのは光英大学病院の水上医師だった。

「ぱぱ?ぱぱ!!」

そして驚くべきことに、ハルトは水上医師を見てパパと呼びながら喜んで彼に歩み寄ったのだ。

「おーハルト、りんちゃんに遊んでもらってよかったな。
りんちゃん、ほんとにありがとう。体調はどうだい?咳は出ない?」

「だいじょうぶだよ!おくすりのんでる。
せんせいがハルトくんのパパだったの!?
りんは、りんをびょういんにつれてってくれたおじさんが、ハルトくんのパパだっておもってたよ」

「彼は五嶋くんって言って、琴羽…ハルトのママのお友達なんだよ。
そっか、仕事忙しくてハルトのお迎えに来たことなかったもんなぁ」

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