ライム〜あの日の先へ

「お忙しいところすみません!弊社社長がご挨拶をしたいと。今しばらくお時間を頂戴できませんか?」

五嶋商事の担当者が慌てふためいて追いかけてきた。

「五嶋社長にお会いできるなら、喜んで」

福島が足を止めた。
だが他のスタッフは困惑の表情を浮かべる。

「福島さん、我々は戻ってよろしいですか?次の仕事がありますので」
「えー、誰か残ってよ。詳しい話聞きたいって言われたら説明して。
俺、今日は早く帰りたいんだよ。
五嶋社長の話長くなりそうだし。あのやる気に満ちた熱い感じが、一日の終わりには鬱陶しいんだよなぁ」
「たった今、喜んでって言ってたのに。福島さんは、すぐ格好つけるんだから」

福島以外のスタッフが呆れ顔で帰ろうとした。



「福島さん!本日はお忙しいところ、ありがとうございました!」

ごちゃごちゃと揉めている間に、大きな声がした。
五嶋商事の担当者とやってきたのは社長の零次だ。

「いえ、五嶋社長こそ、お忙しいのにわざわざありがとうございます」

嫌がっているなどとは微塵にも出さず、福島は営業スマイルで零次に挨拶をする。

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