ライム〜あの日の先へ
お迎えの時間となった。

突然、園内に響き渡るほどの甲高い泣き声がする。どうも0歳児クラスからだ。鈴子は急いで駆けつけた。

「どうしたの?ハルトくん?」

保育士が声をかけている方を見ると、床に這いつくばるようにして泣いているハルトがいた。
そのハルトのかたわらで、体の大きな女の子が仁王立ちしている。

「ダメじゃないの、クレアちゃん。これは今、ハルトくんが遊んでいたのよ。貸してってしないと。無理やり取り上げてはダメ」

どうもクレアがハルトの遊んでいたおもちゃを無理やり取り上げたようだ。
保育士に叱られるとクレアは顔に怒りをにじませ、手にしていたおもちゃを保育士に投げつけた。

「あ、こら。そんな乱暴なことダメよ。仲良く遊んで」

注意されればされるほど機嫌が悪くなるクレアに、保育士もほとほと手を焼いていた。

「毎日こんな感じ。女王様みたいでしょ。クレアちゃんの場合、お母さんもなんですけど」

はぁ、と大きなため息をついた保育士に同情しながら、鈴子は散らばったおもちゃを拾い集めた。

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