ライム〜あの日の先へ
「お母さん、こちらですよ」
病院の中から看護師が鈴子を呼んだ。
「あぁ、引き止めたりしてごめん。お嬢さんのところに行って。そのうち落ち着いたら改めて。
琴羽(ことは)、行こう」
「そうね」
琴羽。
鈴子はその名前に驚愕する。
零次が尊敬して、愛してやまない女性の名前。忘れもしない。ずっとその存在に嫉妬していたのだから。
「ハルトくんママ……琴羽さん……?」
「え?あぁそういえば、普段は子供の名前にママをつけて呼び合うから、知らなかったわね。
改めまして、一条琴羽です」
ーーそっか。
胸の中のしこりがストンと落ちていく。
ーーこの人が、一条琴羽さんだったんだ。
零次くんは、意中の人を手に入れていたのか。
それじゃ、幸せなはずだ。
日本経済を牽引する一条グループの創業者一族のご令嬢。現在は一条グループの屋台骨一条商事に勤めている。
零次の意中の女性がどんな人か知りたくて、調べて得た情報が頭をよぎる。
ならば、一条グループ系列の光英大学病院に顔が効くことも、どんなにハルトのお迎えが遅くなっても上司が何も言わないことにも合点がいく。
雑誌で見た写真とはイメージが違ってわからなかった。仕事上の付き合いではなく、ハルトの母として接していたからかもしれない。
病院の中から看護師が鈴子を呼んだ。
「あぁ、引き止めたりしてごめん。お嬢さんのところに行って。そのうち落ち着いたら改めて。
琴羽(ことは)、行こう」
「そうね」
琴羽。
鈴子はその名前に驚愕する。
零次が尊敬して、愛してやまない女性の名前。忘れもしない。ずっとその存在に嫉妬していたのだから。
「ハルトくんママ……琴羽さん……?」
「え?あぁそういえば、普段は子供の名前にママをつけて呼び合うから、知らなかったわね。
改めまして、一条琴羽です」
ーーそっか。
胸の中のしこりがストンと落ちていく。
ーーこの人が、一条琴羽さんだったんだ。
零次くんは、意中の人を手に入れていたのか。
それじゃ、幸せなはずだ。
日本経済を牽引する一条グループの創業者一族のご令嬢。現在は一条グループの屋台骨一条商事に勤めている。
零次の意中の女性がどんな人か知りたくて、調べて得た情報が頭をよぎる。
ならば、一条グループ系列の光英大学病院に顔が効くことも、どんなにハルトのお迎えが遅くなっても上司が何も言わないことにも合点がいく。
雑誌で見た写真とはイメージが違ってわからなかった。仕事上の付き合いではなく、ハルトの母として接していたからかもしれない。