ライム〜あの日の先へ
「おかえり、鈴子」

リビングでコーヒーを飲みながら雑誌をめくっていた一成が、鈴子の姿に気づいた。一成の顔がまともに見れず鈴子は視線を泳がせる。

「あ、あの…おにい仕事は?」
「今日は午後から。鈴子、朝ごはんは?食べてきたのか?」
「うん、食べた」
「そ。じゃ、コーヒー淹れてあげる」

いつもと変わらない一成の様子に、少し拍子抜けした。


いや、いつもと同じじゃない。

コーヒーを淹れる為に立ち上がった一成の服は昨夜と同じ。綺麗好きでオシャレな兄が二日も同じ服を着ることは無いのに。
鈴子を心配して眠らなかったのかもしれない。そう思ったとたん、一気に罪悪感が押し寄せた。

「おにい、心配かけてごめんなさい」

「心配?全然してないよ。
零次と一緒で心配なんてするはずない。一週間帰ってこないかなって思ってたくらい」


兄は心配しながらも応援してくれている。それが痛いほど伝わってきた。テーブルを真ん中に向かい合わせに座った鈴子に、兄はコーヒーを出してくれた。


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