ライム〜あの日の先へ
「零次くん、これ」

いよいよ、これから日本に帰るため空港に向かおうとしていた零次に鈴子が小さな紙袋を渡した。

中身はチリンを涼やかな音をたてる鈴だった。

「Ring a bell.
知ってる?Ring a bellって思い出させるとか、心当たりがあるって意味なの。
鈴の音を聞いたら、私のこと少しでも思い出してくれたらうれしい。
お揃いなの。ほら」

鈴子がポケットから出した家の鍵に付いている鈴と同じものだった。

「…ありがとう。鈴子の鈴だね。
俺、何も用意してなくてごめん」
「いいの。思い出たくさんもらったから。
全部、大事にする。ありがとう、零次くん」



ーーいっそ、このまま、一緒に連れて行ってしまおうか。

その愛らしさといじらしさに零次はこみあげる欲望を抑えることが辛かった。

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