たとえ、この恋が罪だとしても
「うん、その表情いいね。そう頬杖をついて、遠くを見て。そのまま目線を上げて、そう」

 そろそろ日が落ちる。
 夕陽が水平線を黄金色に染めていく。

「次は海に向かって歩いてみて……。佐藤、ちょっと裾直してきてくれる? うん、OK」
 安西さんのよく通る声を聞くのも今日で終わり……

 けれど撮影が終盤に近づくにつれ、そうした雑念が、一切消えていった。

 俊一さんへのやましさも、紗加さんへの嫉妬も不思議なほど薄れていった。

 今、この時だけがすべて。

 安西さんの言葉を聞いて、ポーズをとること。



 そのことだけがすべてになった。
 
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