たとえ、この恋が罪だとしても
 こんなふうに真剣に、ちゃんとつき合いたいと思ったのは、もちろん文乃がはじめてだ。

 文乃の姿が頭のなかを駆け巡る。

 そう、鎌倉での撮影の日は文乃が到着するまでものすごく不安だった。
 おれのことに嫌気がさして来てくれないのではないか心配だった。

 そうなれば撮影はおじゃん。

 まあ、それならそれで仕方ない。
 スタッフに頭を下げまくればいいかと思っていた。

 そんなことより、二度と文乃に会えないんじゃないか。
 その不安のほうが数十倍も大きかった。

 だから顔を見たときは、心底嬉しかった。

 はじめは困ったような表情を浮かべていたけど、すぐに以前と変わらぬ笑顔を向けてくれた。

 おれは間違っていた。
 彼女の芯は、ガラスのような脆いものでなく、もっとしなやかで強靭なものだったんだ。

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