たとえ、この恋が罪だとしても
 さらに数カ月がすぎ、あっという間に季節はめぐり、12月になった。

 文乃と出会って1年経ったことになる。 
 それなのに、心に巣くう虚しさはまったく消え失せる気配がなかった。

 ここまで諦めが悪い人間だとは、自分でも知らなかった。
 そんな日々を重ねるうちに、突然、ある考えが閃いた。
 
 あの教会のコンサートに行けば、文乃に会えるんじゃないか、と。

 文乃とおれを繋ぐ唯一の細い糸。
 
 いや、でも、彼氏と一緒に来ているかもしれない。

 でも、それでもいい。
 なんでもいい。
 
 とにかく、一度、もう一度会わなければ、おれは先に進めない。

 たとえ、彼女の幸せな姿を見て打ちのめされることになってもかまわない。


 そう思って、コンサート当日、祈るような気持ちで教会の扉を開けた。

 だが……
 文乃は姿を見せなかった。

 もうこれ以上、なんの手がかりも思いつかない……

 立ち上がる気力も失せ、ほかの客が退席した後もしばらく、おれはその場に居続けた。
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