たとえ、この恋が罪だとしても
「なんで保育士さんになったの?」
 わたしの髪をもてあそびながら、安西さんが尋ねる。

「歌にかかわる仕事がしたくて。保育士になれば毎日子供たちと思い切り歌えるなと思って、それで通信で資格を取って……」

「文乃らしいな。おれ、文乃の歌、好きだよ。とっても美しい澄んだ声をしてるから。子供たちが羨ましいよ」

 そんなふうに褒められたのは初めてだ。
 他でもない安西さんに言われたことも相まって、嬉しさがふつふつとこみあげてきた。

「ありがとう……。嬉しいです。そう言ってもらえると」

 そう呟くわたしの髪を耳にかけて、露わになった耳たぶに戯れにそっと歯を立ててきた。

 噛まれたと言っても、ほんの軽く触れられた程度だった。

 でも、心も身体も敏感になっているわたしは、それだけのことにも思わず声をもらしてしまう。
 
「あ、うんっ……」
「……その声も好きだよ。そんな声を聞かされたら」
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