たとえ、この恋が罪だとしても
「あっ、いや。おれ、写真家なんですけど、彼女の写真をぜひ撮りたいんですよ。今度、フランスのMOGA誌で巻頭写真を依頼されて。知りません? フランスの老舗ファッション誌のMOGA」

 そう言って、フォトグラファー安西瀧人(あんざいたきと)と書かれた名刺を差しだした。

「それにしたって、いきなりそんな風に言われたら、文乃ちゃんびっくりするじゃないですか」

「文乃ちゃんっていうのか。かわいい名前だね」
 彼はサングラスを取った。

 驚いた。
 がらっと印象が変わったから。

 ぜんぜん強面(こわもて)なんかじゃなかった。
 とても大人の男性とは思えない人なつっこい笑顔の持ち主。

 ひときわ惹きつけられたのは、その瞳。
 濃茶色の瞳が、まるで貴石のようにきらきらと輝いていて。

 なんて、綺麗な目をしているんだろう。

 そう思ってつい見とれていると、その人は嬉しそうな顔で目を細めた。

 初めて会った男の人だったと思いだして、わたしはあわてて目をそらした。
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