たとえ、この恋が罪だとしても
典型的な職場恋愛。
 ふたりの未来もきっと、平凡を絵に描いたようなものになる。

 身を焦がすような大恋愛の末に結ばれたってわけじゃない。
 でもそんなのは映画かドラマのなかだけの話だろう。
 両親も見合い結婚だけれど、今はとても仲のいい夫婦だ。

 断る理由なんて、何もない。
 わたしを望んでくれるひとと一緒になること以上の幸せなんて、あるんだろうか。

「本当に、本当にわたしと?」
「じゃあ……」
「断るなんて、そんなわけ……うれしいに決まってる」
 俊一さんは目を細めて、わたしを見つめた。

「ああ、よかった。ほっとしたよ。振られたら目も当てられないと思ってた。ひとり寂しく大阪に行くのかって」
「大阪?」

「ああ、昨日、部長から内々に話があってね。向こうの企画開発部門に転属になるんだ」
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