たとえ、この恋が罪だとしても
 しとやかで汚れを知らない聖女。
 聖歌隊の衣装で歌っている文乃の印象だ。
 すっと伸びた背筋が美しかった。

 そういう雰囲気の子には最近めったにお目にかかれない。

 近ごろは、素人でもモデルみたいに綺麗な子が多いけど、整えた外観とは裏腹に内面にはどろどろした欲望が煮えたぎっているのを感じることも多い。

 あれが欲しい、これが食べたい、あんな男と付きあいたいっていう欲望だ。

 いくら表面を飾ってもそれは隠しきれない。

 でも、あの子は違った。

 服装は目も当てられないぐらいダサかった。
 でも彼女の内面にあるのは、欲望とは無縁の透明で繊細なガラス細工だ。

 そのガラス細工は鍵のついた箱に大切にしまってあったらしく、俗世間の垢(あか)にまみれずにここまで来たようだ。
 
 玄関のチャイムが鳴り、来客を知らせる。

 インターホンのカメラ越しに緊張した面持ちの文乃の姿が見えた。

「来た、来た」

 得意げな顔を紗加に向けてから、おれは玄関へ急いだ。
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