たとえ、この恋が罪だとしても
 でも文乃は違う。

 ガキの頃の思い出の場所に連れていこうなんて思ったのも、文乃が初めてだ。

 他の女なら鼻からバカにされると思うようなことも、文乃には通じるはずだと。

 会ったばかりのときから、彼女の前では不思議と素の自分でいられた。

 最初はただの被写体。
 でもいつしか、被写体ではない文乃本人に惹かれてはじめていた。

 いや、一目見たときから、無意識のうちに彼女自身を求めていたのかもしれない。

 文乃の裏表のない素直さや健気(けなげ)さを大切に思う気持ちが、会うたびにおれのなかで膨らんでいくのはわかっていた。

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