How To Love
王子様かしら…



迎えに行くと言った輔は、もう店の搬入口へ車をつけているだろう…そう思いながら手早くエプロンを外す。

何回か食事に行く間に名前は呼べるようになったし、彼の話はいつも楽しい。商品を仕入れる契約のために海外へ行くことがあるそうで、海外旅行へ行ったことのない私は彼の話をとても興味深く聞かせてもらう。

好きか嫌いかと言えば、もちろん好きだけど、一緒に美味しいものを食べて楽しい話が出来れば十分なんだ。

「お待たせし…ま…」

輔の車の助手席を開けて、私は固まってしまった。

「驚いた瞳も綺麗だね、樹里。お疲…」

輔の声は私がドアを閉めたことで聞こえなくなる。どういうこと?これは輔の車で間違いない。そして彼も乗っていた…が、後部座席に乗っていた。運転席にはキャップのお客様だったよね?今日はニット帽で目元が輔に似ていて…目が合うと私の心臓が車内に聞こえるほどの音をたてたと思う。恥ずかしい…って誰?

車から一歩離れた私のもとへ輔が優しい微笑みを浮かべながら来た。

「ごめんね、樹里。驚かせて」
「…誰ですか?」
「双子の兄、昴。俺、今日昼の会食で一杯だけビール飲んだから運転を頼んだんだ」

双子の兄…知らない。彼は何度も店に来ていたよ…はっきりと顔を見たのは今日が初めてだけど。
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