道づれ愛



「じゃあ、とりあえず食事で我慢する」
「とりあえず食事…?」
「そうだ」

 俺はカップの中の珈琲を飲み干してから佑香に視線を合わせた。

「一人より俺といる方が楽しいと思えるようになればいいんだろ?いきなり旅行は無理でも短時間から…業務内容を理解するインターンシップのようなものか?ちょっと違うな…」
「…慣らし保育?」
「慣らし保育?」
「はい…職場の方がお子さんを幼稚園に通わせる時、最初の数日間2、3時間の預りのことをそうおっしゃってました」
「ははっ、それだ。佑香の慣らし保育するわ、俺」

 佑香は笑う俺を見たまま少し眼鏡に触れると

「私、そろそろ失礼します」

 と時計を見た。

「すぐ連絡するよ」
「…」
「無視はするなよ」
「…はい」

 何とか返事は聞けたものの、その食事の日はなかなか訪れなかった。
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