道づれ愛
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 イベントライブ配信前日の土曜日。一般社員に極力休日出勤をさせないよう役員中心に会社の一室を模様替えする。簡単な撮影ができるこの部屋を、簡易的ではあるがアパートかマンションのリビングのように整え配信を行う。今回はわかりやすく小さなクリスマスツリーを飾った。

 そして明日モデルに着てもらう商品を再度チェックし、全国の店舗にも周知の徹底を確認する。男女モデルが恋人同士のように過ごしながらカメラの向こうとも会話するのだが、美香の他に決めたモデルは年明けからの契約なので、明日は女性モデルは美香。男性モデルは兵藤社長オススメの若い新人だ。

「ネット注文の方も確認しました。倉庫もOKです。お疲れ様でした」
「「「お疲れ様でした」」」

 配信の予告後の反響も良い。この配信が定着してきて男女ペアのルームウェアや下着も認知されてきているのを感じる。クリスマスの次はバレンタインとホワイトデーだな。

「佑香?今日は何してた?」
‘お疲れ様、尊さん。今日は大掃除…母に駆り出されちゃった’
「お母さん、段取りいいな。もう大掃除って」
‘母は毎年12月に入ったら天気のいい日にやっちゃうの’
「そうか。今日は天気が良かったのも知らないな…暗くなるまで社内にいて」
‘大変だった?明日は見るね’
「いつも通り大変だった。1時からだぞ」
‘うん’
「気に入ったのあったら言って。プレゼントするよ」
‘ちゃんと視聴者らしく注文するよ、ふふっ。電話ありがとう、尊さん’
「ん、おやすみ佑香。来週焼き肉行くぞ」
‘うん、ありがとう。おやすみなさい’

 1週間会えなかったな…水曜くらいに夕食に誘えるか?と思いながらスマホを置いた。そして翌朝、日曜日の早朝にもかかわらず、そのスマホのコール音に起こされた。
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