道づれ愛
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 引っ越しの1週間前に両親の顔合わせのため昼間の食事会を催した。どちらの家が支払うだとか、互いの気を煩わすことのないように俺が招待するという形でホテルの日本料理店の個室を予約した。

 和やかに食事が進む中、お父さんから俺と親父に質問される。

「尊くんの社長さんという立場上、結婚式は大々的なものになるのでしょうか?桐生さんも社長さんですし」
「尊と佑香さん次第で大々的にでも小規模でも構わないと、私は考えていましたが二人は話はしたか?」

 親父から話を振られ佑香と話をしたと答えた。

「仕事関係者は呼ばないでおこうと思うんだ。家族、親戚と友人で十分だと佑香とは話した」
「そうか、それならそうで構わないが、二人で決めた事をきちんと小田さんに報告するようにな。こうしてご心配を掛けてはいけない。ましてや花嫁の方が準備は大変だろうから、小田さんには相談と報告をしっかりしなさい」
「わかった」
「桐生さん、お心遣いありがとうございます。佑香もちゃんと桐生さんにご連絡をしてね」
「はい」

 皆で連絡先を交換し、来週佑香が引っ越しということも確認して今日は無事終了となる。

「今からこのホテルの式場の見学をするの」
「そうなの?」
「うん、ここまで来たから見に行こうって尊さんが言ってくれたの」
「まだどこも候補に挙げていませんから、イメージ作りに」
「楽しい時期よね、佑香。幸せね」
「うん」

 佑香とお母さんの穏やかな会話が俺と、そして親父にも響く。

「尊、大切なお嬢さんだ。ご両親がされている以上に、佑香さんをお前が大切にしないといけないな」
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