青春の備忘録
Prologue
 3年生全員が学校に集まる最後の日、賑やかな中庭を横目に早足で校舎を抜けた時、
 「ああ、こうやって全てが終わっていくんだな」
 と、風に揺られてほろほろと散る桜の花びらを眺めた。
 大学に進学して一人暮らしを始めた春、彼氏を作らなければという焦りから家に通してしまった男が私に覆いかぶさった時の、余裕の無い戸惑いのある目を見て、
 「あれが最初で最後の純粋な恋愛だったんだな」
 と、部屋の中で止まった時をため息混じりに動かした。
 「『浩三さま、浩三さま!』」
 古いメロドラマで、駆け落ちに失敗した女が成す(すべ)もなく男の乗る汽車を眺めるばかりのシーンを見た時、
 「この恋愛もこんな感じだな」
 と、しみじみとした気持ちになった。
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