虜囚島
「なぁ、どうしたんだ?」
徹と京子が見えなくなり、深刻な声で広一が聞いてきた。
「いや…自分でもよく分からないけど、さっきの神社の事が気になったのよ」
「この島には、神社はなかったはずだけどなぁ…」
余りに私が気にしているので、広一も自信がなくなってきた様だ。

「四人の中では俺が一番初めに島にいた事は確かだけれど…だからと言って、それが島に詳しいとはイコールにならないよな」
広一が急に冷静に考え始めた。
「違和感があるという事は、何かで情報を得ているという事だよな」
いつもの軽い感じとは打って変わって、真面目な趣きだ。
ここまで真面目で、しかも、何の根拠もない私の違和感について考えてくれる広一は……正直、気味が悪い。

「あんた、どうしたの?急に真面目になって」
続けて私は「脳、大丈夫?」と言った。

「おいおい、そりゃないだろう。折角、人が親身になって考えてやってるのにさ」
「だって、急に真面目になるし、いつもの広一じゃないみたいだし…」
「俺だって考える時は考えるさ」
「でも、こんなどうでもいい事、何でそんなに真剣に考えてるの?私の空想かも知れないよ?」

自分で言い始めたのに、自分の意見をここまで否定している自分に、少し笑ってしまった。
しかし広一は、未だに至って真面目な顔をしている。

「前から思ってたんだけどよ…」
一際、真面目になった広一に、私はゴクリと喉を鳴らした。

「この島…何か違和感がないか?」
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