美しき微笑みのあの人に恋をした。
休日に、服でも買おうかと街に出て、このコーヒーショップに立ち寄った。
ちょっと一休みしたかったから。
下はそこそこ埋まってたけど、2階は誰もいなくて、ラッキーって思ってたら…
程なくして、彼が上がって来た。



今日と同じ、黒いニット帽に黒縁の大きな眼鏡に黒いマスク。
服も黒づくめで、怖いというところまではいかなかったけど、ちょっと緊張感を感じた。



出来るだけ気にしないようにして、コーヒーを飲んでたら、彼はカタカタとパソコンのキーを叩いて…
それから、画面を見てなんとも言えない程、素敵な笑顔を見せたんだ。



笑顔とは言っても、見えるのは眼鏡の奥の目だけだけど、それが、たとえようもないくらい、優しくて愛らしくて…
私はその一瞬で、ハートを鷲掴みされてしまった。
心臓がドキドキして、顔が熱くなって、思わず声をあげてしまいそうだった。
そんな大袈裟な一目惚れなんて、滅多にない。
いや、一目惚れ自体、今までしたことがなかったし、しかも、目元だけで好きになってしまうなんてありえない!
だけど、理性がそう思っても、騒がしい鼓動は静まることがなかった。
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